日本で長く暮らしていると、「そろそろ永住権を取りたい」と考えるのは自然なことです。しかし、永住権の審査は年々厳しくなっており、多くの方が不安に感じるのが「年収」に関するハードルです。
「今の給料で足りるのだろうか?」「家族がいる場合はいくら必要なのか?」
今回は、永住許可申請における「年収要件(独立生計維持要件)」について、公的なデータに基づき、どこよりも分かりやすく解説します。
1. なぜ永住権の審査で「年収」が見られるのか?
永住権の審査では、法律によって「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」という条件が定められています。
簡単に言うと、「日本で将来にわたって、誰の助けも借りずに自立して生活していける経済力があるか?」がチェックされます。生活保護などの公的扶助を受けずに、納税義務をしっかり果たしながら安定して暮らせる人を、日本政府は求めているのです。
2. 目安となる「年収300万円」の壁と現在の基準
以前は「年収300万円以上」がひとつの目安と言われていました。しかし、最近の審査状況を見ると、この基準はより厳格化しています。
東京出入国在留管理局などの審査現場では、「日本人の平均年収と同等、あるいはそれ以上」であることが強く求められる傾向にあります。
国税庁が発表している「民間給与実態統計調査」によると、日本人の平均年収は約440万円前後(令和4年分では458万円)となっています。もちろん、住んでいる地域や職種によって差はありますが、単身者であっても、直近3〜5年間で継続して年収300万円〜350万円以上を維持していることが、許可を得るためのスタートラインと言えるでしょう。
3. 家族がいる場合の計算方法:扶養人数がカギ!
独身(単身)の場合と、家族を養っている場合では、求められる年収額が大きく変わります。
審査の際、一般的に「本人の年収 -(扶養家族数 × 70万円〜80万円)」が、先ほどの単身者基準(300万円)を下回らないことが目安とされます。
例えば、以下のようなケースを見てみましょう。
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夫(申請者)、妻(扶養)、子供2人の「4人家族」の場合 この場合、3人の家族を養っていることになります。実務上の目安としては、年収500万円〜600万円以上が必要です。
ここで注意が必要なのが、「世帯年収」の数え方です。 夫が正社員、妻がアルバイト(扶養内)という場合、入管の審査では妻のアルバイト代を合算して評価してくれないケースが多いです。あくまで「メインで家計を支える人の継続的な安定収入」が重視されます。
4. 審査される「期間」と「証明書類」
永住権の審査は、直近1年だけの年収が良ければいいというわけではありません。
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審査期間: 一般的な就労ビザからの申請の場合、直近5年分の所得状況が見られます。(高度専門職などの優遇措置がある場合は1年または3年)
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証明書類: 「住民税の課税証明書」と「納税証明書」が最も重要です。
単に「いくら稼いだか」だけでなく、「税金や年金、健康保険を、1日も遅れずに期限内に納めているか」という点が、年収額と同じくらい、あるいはそれ以上に厳しくチェックされます。
5. 年収が足りない場合の対策と注意点
もし、自分の年収が目安に届かない場合、どうすればよいでしょうか。
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転職による収入アップ: 転職してすぐに申請するのではなく、新しい職場で1年以上安定した給与を得てから申請するのが定石です。
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扶養を外す: 実際には仕送りをしていない親族を税法上の扶養に入れている場合、年収要件で不利になることがあります。適切な扶養人数に見直すことも検討すべきです。
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副業の申告: 正しく確定申告を行っている副業収入であれば、合算して評価される可能性があります。
6. 気になるQ&A
Q1:転職したばかりですが、永住申請に影響はありますか?
A:はい、大きく影響します。 永住審査では「継続性」と「安定性」が重視されます。転職直後は「これからこの会社でずっと働き続けられるか」が不透明と判断されやすいため、最低でも転職から1〜2年、できれば3年程度経過してから申請するのが安全です。
Q2:過去に数日間だけ税金の支払いが遅れたことがあります。不許可になりますか?
A:現在の審査基準では、1日でも遅れると非常に厳しくなります。 納付期限を守っていることは「公的義務の履行」として年収と同じくらい重要です。もし未納や遅延がある場合は、完納した上で、数年間「期限内の納付実績」を積み上げてから申請することをお勧めします。
Q3:住宅ローンや自動車ローンがある場合、審査にマイナスですか?
A:いいえ、基本的にはマイナスになりません。 ローンを組めているということは、金融機関から信用がある証拠とも捉えられます。ただし、年収に対してあまりに過度な借り入れがあり、生活が困窮していると判断される場合は別です。通常の範囲内であれば、借金があること自体で不許可になることはありません。
最後に
永住権の申請は、一度不許可になると次回のハードルが上がってしまうこともあります。特に年収要件は、自分の努力(キャリアアップ)や家族構成の整理、そして何より「正確な書類の提出」でクリアできる部分です。
「自分の年収で大丈夫かな?」と少しでも不安に思われたら、まずは専門家に相談することをお勧めします。