日本で一生懸命働いている外国人の方はこんな疑問を持つのではないでしょうか?
「日本を離れて帰国することになったけれど、今まで給料から引かれていた年金はどうなるの?払い損になってしまうの?」
結論から言うと、日本で6ヶ月以上年金保険料を払っていた方は、帰国後に「脱退一時金」という形でお金を受け取ることができます。しかし、この制度を知らずに帰国してしまったり、手続きを間違えて損をしてしまっている方が非常に多いのが現状です。
今回は、帰国を考えている外国人の方が「損をしないため」に、脱退一時金の仕組みから申請方法、そして「本当に申請すべきか?」という判断基準まで、わかりやすく解説します。
1. 「脱退一時金」とは?わかりやすく解説
脱退一時金とは、日本で働いて年金を納めていた外国人が、年金を受け取る資格(原則10年の加入)を満たさないまま帰国する場合に、これまでに納めた保険料の一部を「払い戻し」として受け取れる制度です。
日本の法律では、働いている人は全員年金に入らなければなりません。しかし、数年で帰国してしまうと、将来日本から年金をもらうことができません。「それなら、払った分を少し返しますね」というのがこの制度の趣旨です。
制度を利用するための4つの必須条件
以下の4つの条件をすべて満たしている必要があります。
-
日本国籍を持っていないこと
-
年金(厚生年金または国民年金)に合計6ヶ月以上入っていたこと
-
日本に住所を持っていないこと(転出届を出していること)
-
年金(障害年金など)をもらう権利を一度も得たことがないこと
2. 手続きの流れと期限:いつ、どこで、どうやる?
手続きは「日本を出国してから」行うのが基本ですが、準備は出国前から始めておく必要があります。
申請のタイミング
日本に住所がなくなった日(役所に転出届を出した日)から「2年以内」に請求しなければなりません。2年を過ぎると、1円も受け取れなくなるので注意してください。
提出先と方法
「日本年金機構」へ書類を郵送します。現在は電子申請も可能になっていますが、添付書類が多いため、郵送や代理人(行政書士など)を通じた申請が一般的です。
必要な書類リスト
-
脱退一時金請求書(年金機構のHPでダウンロード可能)
-
パスポートのコピー(顔写真のページ、出国印があるページなど)
-
銀行口座の証明書(母国の銀行でも可能ですが、受取口座の確認書類が必要です)
-
年金手帳(または基礎年金番号がわかる書類)
3. 【重要】脱退一時金をもらうと「年金加入期間」がゼロになる!
ここが一番注意すべきポイントです。脱退一時金を受け取ると、それまでの日本での年金加入期間は「すべてなかったこと」になります。
もし、将来また日本に戻ってきて働く可能性がある場合、期間がリセットされることで「将来の老齢年金」がもらえなくなるリスクがあります。
4. 専門家が教える情報:税金の還付について
実は、脱退一時金(厚生年金の場合)は、受け取る際に約20%の所得税が引かれています。
例えば、100万円もらえるはずの人が、手元には80万円しか振り込まれないということです。「20万円損をした」と思うかもしれませんが、安心してください。この引かれた税金は、帰国後に「所得税の還付申告」を行うことで、取り戻すことができる可能性があります。
ただし、この還付申告は本人では難しいため、日本に住んでいる「納税管理員(友人や行政書士など)」を立てて手続きを行う必要があります。
5. 「社会保障協定」を結んでいる国の人は要注意!
日本と「社会保障協定」を結んでいる国(アメリカ、ドイツ、韓国、中国、ベトナム※など)の方は、脱退一時金をもらわない方が得な場合があります。
「年金通算」といって、日本で働いた期間を、自分の国の年金加入期間としてカウントできる制度があるからです。脱退一時金をもらってしまうと、この「通算」ができなくなります。
※ベトナムとの協定は現在運用に向けた準備段階(2026年時点)ですが、今後の動向に注目が必要です。
6. 知って得する!Q&Aコーナー
Q1:日本にいる間に手続きを終わらせることはできますか?
A:半分正解で、半分間違いです。 書類の作成や準備は日本にいる間にできますが、正式な受理は「日本から出国した後」です。市役所に転出届を出した後であれば、出国前に郵送することも可能ですが、基本的には帰国後に海外から郵送するか、日本の代理人に任せる形になります。
Q2:いくらくらい戻ってくるの?計算式は?
A:加入していた期間の給料の平均と、保険料率によって決まります。 大まかな目安ですが、3年間日本で会社員として働いた場合、給料によりますが数十万円から100万円程度になることが多いです。年金機構のホームページに計算式がありますが、非常に複雑ですので、まずは「給料の約1ヶ月分×年数」くらいをイメージしておくと良いでしょう。
Q3:帰国後、また日本に戻ってきたらどうなりますか?
A:脱退一時金をもらっていなければ、以前の期間と合算されます。 もし1回目に来日した時の期間(3年)と、2回目に来日した時の期間(7年)を合わせて10年になれば、将来日本の年金が一生涯もらえます。しかし、1回目の帰国時に脱退一時金をもらってしまうと、0年からのスタートになってしまいます。
まとめ
脱退一時金は、外国人の方にとって大切な権利ですが、メリットとデメリットがあります。
-
今すぐまとまったお金が必要なら「脱退一時金」を請求する。
-
将来また日本で働く可能性があり、老後の年金が欲しいなら「請求しない」という選択肢もある。
自分のキャリアプランに合わせて、慎重に判断しましょう。もし「自分の場合はどうすればいいの?」「手続きが面倒で不安」という方は、ぜひ一度、VISA専門家である行政書士にご相談ください。