日本で暮らす外国人の方や、そうした方を雇用しようと考えている企業にとって、最も注意しなければならないのが「就労の可否」です。特に最近、ニュースなどで耳にすることが増えた「監理措置」や「仮放免」という状況にある方については、ルールが非常に複雑で、誤った判断をしてしまうと「不法就労」として厳しい罰則(不法就労助長罪など)を科されるリスクがあります。
この記事では、難しい法律用語を抜きにして、どのような条件であれば働けるのか、あるいは絶対に働いてはいけないケースはどこなのかを詳しく紐解いていきます。
1. そもそも「監理措置」や「仮放免」はビザ(在留資格)ではない
まず、大前提として知っておいていただきたいのは、「監理措置」や「仮放免」は、日本に滞在するための「在留資格(ビザ)」ではないということです。
本来、日本に滞在する外国人は「技術・人文知識・国際業務」や「家族滞在」といった何らかの在留資格を持っています。しかし、事情により在留資格を失い、本来であれば入管の施設に収容されるべき状態にある人が、一定の条件のもとで「施設の外で生活することを許されている状態」が監理措置や仮放免です。
つまり、この状態にある方は、原則として「日本にいてはいけない人(退去強制の対象者)」という扱いになります。そのため、基本的には働くことが禁止されています。
2. 働くことができる「唯一の例外」とは?
「基本的には働けない」と書きましたが、実は例外的に就労が認められるケースがあります。それは、以下の条件をすべて満たしている場合です。
① 退去強制令書(日本から出ていきなさいという命令)がまだ出ていないこと
まだ裁判や審査の途中で、「日本から出ていくべきかどうかの最終決定」が下っていない状態であることが条件です。すでに「退去強制令書」が発付されてしまっている人の場合は、監理措置中であっても、後述する許可を取ることはできず、一切働くことができません。
② 「報酬を受ける活動の許可」を取得していること
監理措置を受けている人のうち、一定の条件を満たす人は、入管に対して「お金をもらって働いてもいいですか?」という申請(入管法第44条の5に基づく許可申請)を行うことができます。 この許可証を手にしている場合に限り、その許可の範囲内(職種や時間など)で働くことが可能になります。
チェックポイント:
もしあなたが雇用主で、仮放免や監理措置中の方を雇おうとしているなら、必ず「許可証」の現物を確認してください。口頭での「大丈夫です」という言葉を信じて雇ってしまうと、雇用主側も処罰の対象になります。
3. 決して見過ごせない「不法就労助長罪」のリスク
もし、働くことが認められていない人を働かせてしまった場合、あるいは働くための許可の範囲を超えて働かせてしまった場合、それは「不法就労」となります。
ここで恐ろしいのは、働いた本人だけでなく、「雇った側(会社や事業主)」も非常に重い罪に問われるという点です。
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不法就労助長罪: 3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金(またはその両方)
「知らなかった」「うっかり確認し忘れた」では済まされないのが入管法の厳しいところです。企業としては、在留カードがない、あるいはカードに「就労不可」と書かれている場合は、絶対に雇用してはいけません。
4. 公的機関の情報から見る「現在の運用」
出入国在留管理庁(入管)の指針では、監理措置制度の導入に伴い、逃亡防止や適切な管理を目的として、生活費の確保が必要な場合に限り、厳格な審査を経て就労許可を出すとしています。
これらの公的情報からも分かる通り、政府は不法就労に対して非常に厳しい姿勢をとっています。監理措置下の外国人の活動範囲についてはより明確に区分されるようになりました。
5. 「これってどうなの?」読者の悩みに答えるQ&A
Q1. 「仮放免中」の友人が困っています。短期間のアルバイトなら手伝ってもらっても大丈夫ですか? A1. 絶対にダメです。 たとえ1日だけの単発バイトであっても、許可なく報酬を得る活動をすれば不法就労になります。友人としての助けが、結果としてその友人の強制送還を早めたり、あなた自身が前科を背負うことになりかねません。必ず許可の有無を確認してください。
Q2. 面接に来た人が在留カードを持っていません。代わりに「仮放免許可書」を見せてくれましたが、これで雇えますか?
A2. その書類だけでは雇えません。 仮放免許可書や監理措置決定書には、裏面や別紙に「就労の可否」についての記載があるはずです。「職業活動に従事することを妨げない」旨の記載や、別途「資格外活動許可(または報酬を受ける活動の許可)」がない限り、雇用は不可能です。
Q3. 以前は働けていたのに、更新したら「就労不可」になりました。なぜですか?
A3. 審査状況が変わった可能性が高いです。 例えば、裁判の結果が出て「退去強制令書」が発付された場合、それまで持っていた働く許可は失効し、新たに取ることもできなくなります。現状の法制度では、日本からの出国が確定した段階で、就労の道は完全に閉ざされることになります。
まとめ:正しい知識があなたと外国人を守ります
「監理措置」や「仮放免」という不安定な立場にある方々を支援したいという気持ちや、人手不足を解消したいという企業の思いは理解できます。しかし、日本の法律はルールを逸脱した雇用に対して非常に厳格です。
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本人: 許可なく働けば、日本にいられる可能性(在留特別許可など)を自ら捨ててしまうことになります。
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雇用主: 軽い気持ちでの雇用が、会社としての社会的信用を失墜させ、多額の罰金を支払うことになります。
判断に迷う場合や、具体的な許可申請の手続きについて知りたい場合は、必ず入管業務に精通した行政書士などの専門家に相談しましょう。