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【解説】ハーグ条約で子供を日本へ連れて帰る際の手続きは?

国際結婚をされている方や、海外で生活しているご家族にとって、万が一夫婦関係が悪化した際の「子供の連れ去り」は非常に深刻な問題です。「自分の子供なのだから、勝手に日本へ連れて帰っても問題ないだろう」と考えるのは非常に危険です。

本記事では、国際的なルールである「ハーグ条約」の基本から、日本に帰国した際に関係する在留資格「特定活動」について、難しい法律用語を抜きにして分かりやすく解説します。


1. 最近よく聞く「ハーグ条約」とは?

ハーグ条約(正式名称:国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)とは、簡単に言うと「国境を越えて連れ去られた子供を、一度元の国に戻して、そこでじっくり話し合おう」という国際的な約束事です。

日本は2014年4月にこの条約に加わりました。このルールがあることで、例えば海外で暮らしていた親が、もう一方の親の許可なく子供を日本に連れて帰った場合、元の国に子供を戻すための手続きが行われることになります。

なぜ「元の国に戻す」必要があるのか?

子供にとって、それまで生活していた環境がいきなり変わることは大きな負担になります。どちらの親が育てるべきか(親権)という争いは、連れ去った先の国ではなく、「もともと子供が住んでいた国」の裁判所で決めるべきだという考え方が根底にあるからです。


2. 実例:ドイツから無断で子供を連れて帰ったケース

ここで、あるケースを見てみましょう。

日本人女性Aさんは、ドイツ人男性Bさんと事実婚(籍を入れない結婚)をしており、5歳の子供Cくんがいました。生活の拠点はドイツにありましたが、コロナ禍での育児に疲れたAさんは、Bさんに無断で「日本で育てる」と決め、Cくんを連れて日本へ帰国してしまいました。

このケースは、典型的な「不法な連れ去り」に該当する可能性があります。ドイツの法律では親権が両親にある場合、片方の同意がない連れ去りは認められないからです。

たとえ自分の子供であっても、相手の同意なしに国境を越えることは、国際法上のトラブルに直結します。


3. 日本での裁判と在留資格「特定活動」

このようなトラブルが発生すると、日本の家庭裁判所で「子供をドイツに戻すべきかどうか」という裁判が行われます。

このとき、子供を連れ戻しに日本へやってきた外国人親(この場合はドイツ人男性Bさん)には、日本に滞在して裁判の手続きを行うための時間が必要です。しかし、観光ビザ(短期滞在)では期限が短すぎて、十分に話し合いや裁判ができないことがあります。

そこで、日本の法務大臣が個別に認める在留資格「特定活動」が与えられるケースがあります。

「ハーグ条約に基づく特定活動」とは?

これは、ハーグ条約に関わる裁判や手続きを日本で行うために、特別に認められる滞在許可です。これにより、外国人の親は日本に一定期間留まり、法的な手続きに専念することが可能になります。


4. 知っておくべき公的な手続きの流れ

ハーグ条約の手続きは、主に外務省(中央当局)が窓口となります。

  1. 援助申請: 連れ去られた側の親が、外務省に子供を戻すための手伝い(援助)を申請します。

  2. 所在特定・協議: 外務省が子供の居場所を確認し、まずは話し合いでの解決を促します。

  3. 裁判所の手続き: 話し合いで解決しない場合、東京または大阪の家庭裁判所で返還裁判が行われます。

公的ソース:


5. 知りたかった!ハーグ条約Q&A

Q1. 子供が「日本にいたい」と言えば、戻らなくて済みますか?

A1. 子供にある程度の年齢や判断力(一般的に10〜12歳以上が目安)がある場合、その意見は尊重されます。ただし、幼い子供の場合は「元の国に戻すのが原則」です。また、戻ることで子供に重大な危険が及ぶと判断された場合も例外として認められることがありますが、そのハードルは非常に高いです。

Q2. 日本人同士の夫婦が海外で離婚した場合も、ハーグ条約は関係ありますか?

A2. はい、関係あります。親の国籍は関係ありません。例えば「アメリカ在住の日本人夫婦」が、妻が夫に無断で子供を日本に連れ帰った場合、ハーグ条約の対象となり、アメリカへ子供を戻すよう命じられる可能性があります。

Q3. 裁判のために日本に来る外国人の親は、日本で働けますか?

A3. ハーグ条約の手続きのために与えられる「特定活動」の在留資格は、基本的に「裁判や面会交流のため」のものです。そのため、原則として就労(働くこと)は認められません。 滞在中の費用については、あらかじめ準備しておく必要があります。


まとめ:国際的な子供のトラブルは専門家へ

ハーグ条約が絡むケースは、単なる家庭内の問題ではなく、国家間の法律が絡む非常に複雑な事案です。

  • 無断で子供を連れて帰ってしまった、あるいは連れ去られた。

  • 日本での裁判のために、どの在留資格を取ればいいか分からない。

  • 特定活動ビザの申請をスムーズに行いたい。

このような不安をお持ちの方は、一人で悩まずに国際業務を専門とする行政書士にご相談ください。

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