日本で英語や母国語を教える「語学教師」として活躍されている外国人はとても多いですが、実は「どこで教えるか」によって、取得しなければならないビザの種類が全く異なることをご存じでしょうか。
「これまで学校で英語を教えていたから、そのまま民間の英会話スクールに転職しても大丈夫だろう」 「ビザの期限が残っているから、働く場所が変わっても問題ないはず」
このように思い込んでいると、知らず知らずのうちに法律違反(資格外活動や不法就労)になってしまい、将来のビザ更新や永住申請に致命的な悪影響を及ぼすリスクがあります。
この記事では、語学教師として日本で働く皆さんが絶対に知っておくべき「教育」ビザと「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」ビザの違いや、働く場所が変わったときの正しい手続きについて、分かりやすく噛み砕いて解説します。
1. 語学教師が関わる「2つのビザ」の違いとは?
日本で語学を教える場合、大きく分けて2つの在留資格が存在します。その違いは「勤務先(雇用主や教える場所)」にあります。
①「教育」ビザ
このビザは、日本の「フォーマルな教育機関」で教えるためのものです。
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主な勤務先: 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校、各種学校(インターナショナルスクールなど)
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具体的な職種: いわゆるALT(外国語指導助手)や、学校に直接雇用されている語学教師など。
②「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザ
このビザは、一般の「民間企業」や「個人塾」などでビジネスとして語学を教えるためのものです。
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主な勤務先: 民間の英会話スクール、大人のための語学ビジネス、企業内での語学研修、フランチャイズ型の語学教室
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具体的な職種: 民間スクールの英会話講師、ビジネス英語のインストラクターなど。
【超重要ポイント】 同じ「英語を教える仕事」であっても、勤務先が「学校法人の学校」なら教育ビザ、「民間の株式会社が運営するスクール」なら技人国ビザでなければなりません。ここを混同してしまうことが、トラブルの最大の原因です。
2. よくある落とし穴:契約形態や働く場所が変わったらどうなる?
ここで、あるケースをベースに、何が問題になるのかを考えてみましょう。
あるオーストラリア国籍の先生は、もともと民間企業が経営する英会話スクールで働いていたため、「技人国」のビザを持っていました。その後、転職して幼稚園で教えることになった際、その幼稚園が「学校法人」の運営だったため、ビザを「教育」に変更しました。
ここまでは完璧で、何の問題もありません。しかし、その後さらに状況が変わります。
その幼稚園との直接契約が終了し、新しく法人化された民間の英会話スクールに籍を置くことになりました。そして、その英会話スクールから「提携している幼稚園に派遣されて、課外授業として週に数時間だけ英語を教える」という働き方に変わったのです。教える相手は同じ幼稚園児ですが、ここには大きな罠が潜んでいます。
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以前の働き方: 学校法人の幼稚園と直接契約 = 「教育」ビザが必要
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現在の働き方: 民間の英会話スクールと契約(そこから幼稚園の教室を借りてレッスンを提供) = 「技人国」ビザが必要
この方の現在の主な収入源は、民間スクールからの報酬です。しかし、手元にあるビザは「教育」のまま。これでは、現在の民間スクールでの勤務はビザの範囲外(資格外活動)となってしまい、そのまま放置すると不法就労とみなされてしまうのです。
このように、「教える内容(英語)」や「教える場所(幼稚園の教室)」が同じに見えても、「誰からお金をもらっているか(契約の相手方)」「どのような形態で運営されているか」によって、必要なビザが変わるため、細心の注意が必要です。
3. 勤務先が変わったときの手続き(ビザ変更のステップ)
もし、あなたが「教育」ビザを持っていて、新しく民間の英会話スクールに転職することが決まったら、仕事を始める前に必ず「在留資格変更許可申請」を行わなければなりません。
手続きの流れとポイントは以下の通りです。
ステップ①:必要書類の準備
あなた自身の情報(学歴や職歴の証明書、資格の証明書など)に加えて、新しい勤務先(民間スクール)から以下の書類をもらう必要があります。
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会社の公式な雇用契約書(給与や労働時間が明記されたもの)
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会社の決算書や登記事項証明書(会社が安定して運営されているかを示すもの)
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会社のパンフレットやウェブサイトのコピー(事業内容が分かるもの)
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申請理由書: なぜ今回の転職によってビザの変更が必要なのか、これまでの経緯とこれからの仕事内容を説明する文章(※非常に重要です)。
ステップ②:出入国在留管理局への申請
新しい職場で働き始める前に、住んでいる地域を管轄する出入国在留管理局(入管)へ変更申請を行います。 ※注意:原則として、変更許可が出る前に新しい民間スクールでフルタイムの仕事を始めてはいけません。
入管がチェックする審査のポイント(公的基準)
出入国在留管理庁が発表している審査基準(基準省令)によると、技人国ビザ(国際業務)で語学教師をする場合、主に以下の点が厳しく見られます。
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学歴または職歴の条件: 大学を卒業していること(学士以上の学位)、または関連する業務(翻訳・通訳・語学の指導など)について3年以上の実務経験があること。
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報酬の条件: 日本人が同じ仕事をする場合と同等額以上の給与(報酬)を受け取ること。
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企業の安定性・信頼性: 雇用側のスクールが、きちんとした経営基盤を持っており、継続して給与を支払える状態であること。
4. 外国人講師が気になる!知っておきたい疑問を解決(Q&A)
Q1. インターナショナルスクールで教える場合は、どちらのビザになりますか?
A1. そのインターナショナルスクールが、日本の法律(学校教育法)に基づく「各種学校」などの認可を受けているかどうかで分かれます。 認可を受けている学校であれば「教育」ビザになります。一方で、認可を受けていない、いわゆる認可外の保育施設や民間企業が運営するスクールの形をとっている場合は「技術・人文知識・国際業務」ビザが必要です。見た目の名前が「〜インターナショナル」であっても、法律上の位置づけを事前に確認する必要があります。
Q2. 「教育」ビザを持っています。ビザの有効期限がまだ2年残っていますが、来月から民間の英会話スクールに転職します。期限が切れる次の更新のときにまとめて手続きすればいいですか?
A2. いいえ、絶対にダメです!転職して働く前に、必ず「在留資格変更許可申請」をして、許可をもらわなければなりません。 ビザの有効期限が残っていても、それは「教育」の活動を行うための期限です。許可を得ずに民間のスクールで働くと、その瞬間から不法就労(資格外活動罪)になってしまいます。また、転職したときには14日以内に入管へ「契約機関に関する届出」を出す義務もあります。必ず事前に手続きをしてください。
Q3. 英語を教えるための特別な資格(CELTAやTEFLなど)を持っています。これはビザの審査で有利になりますか?
A3. はい、非常に有利なプラス材料になります。 技人国ビザの国際業務では、実務経験や専門性が重視されます。ケンブリッジ大学が認定する「CELTA」や、国際的な英語教授資格である「TEFL」「TESOL」などを持っていることは、あなたが「質の高い語学教育を行えるプロフェッショナルである」という強力な証明(申請理由書の裏付け)になります。大学の卒業証明書と一緒に、これらの資格証のコピーも必ず入管へ提出しましょう。
5. まとめ:不安なときは専門家に相談を
日本での語学教師としてのキャリアは、とても素晴らしいものです。子供から社会人まで、多くの日本人が皆さんのレッスンを必要としています。
しかし、せっかくの素晴らしい仕事も、ビザの手続きを一歩間違えるだけで、日本にいられなくなるような大きなトラブルに発展してしまいます。 「自分の今の契約はどちらのビザになるのだろう?」 「新しく会社を立ち上げてスクールを法人化するけれど、講師のビザはどうすればいい?」 など、少しでも疑問や不安を感じたら、取り返しのつかないことになる前に、ぜひ一度、ビザ専門の行政書士にご相談ください。