こんにちは。日本の在留資格(VISA)手続きや、日本で暮らす外国人のサポートを専門に行っている行政書士です。
日本にある企業や工場、お店などで一所懸命に働いている外国人の方が増えています。中には、母国に大切な家族を残し、単身赴任のような形で日本で頑張っている方も少なくありません。
もしも、日本で働いている外国人の方が、病気やケガ、突然の事故などで亡くなってしまったら、残された海外の家族はどうなるのでしょうか。
実は、日本の年金制度(厚生年金や国民年金)に加入して保険料を支払っていた場合、亡くなった後にその家族を支えるための「遺族年金」というお金が支給される仕組みがあります。これは、家族が日本にいなくても、海外に住んだままでも受け取ることが可能です。
しかし、「外国人だから手続きが分からない」「どんな条件を満たせばもらえるの?」という不安や疑問を持つ方が非常に多いのが現状です。
そこで今回は、日本で働く外国人の方が亡くなった場合に、海外に住む家族が日本の遺族年金を受け取るための条件や必要書類、注意すべきポイントを、専門用語をできるだけ使わずに優しく解説します。
1. そもそも「遺族年金」とは?海外の家族も本当にもらえるの?
日本の会社で正社員やアルバイト(一定時間以上)として働くと、毎月の給料から「厚生年金保険料」というお金が差し引かれます。これは将来高齢になったときにもらえる「老齢年金」のためだけのものではありません。
万が一、働いている本人が亡くなってしまったときに、その人が養っていた家族(遺族)の生活を守るための保険としての役割も持っています。これが「遺族年金(遺族厚生年金)」です。
国籍は関係ありません。外国人であっても、日本の年金に加入して条件を満たしていれば、海外にいる家族(妻、子ども、親など)が日本政府(日本年金機構)にお金を請求して受け取ることができます。
2. 遺族年金をもらうための「亡くなった人」の条件
海外の家族がこのお金を受け取るためには、まず「亡くなった本人」が一定の条件(要件)を満たしている必要があります。難しい法律の言葉を分かりやすく整理すると、主に次のいずれかに当てはまる場合です。
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日本の会社で働いている期間中(厚生年金に加入している間)に亡くなった場合
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会社を辞めた後、日本で最初に病気やケガの診察を受けた日から5年以内に、その病気やケガが原因で亡くなった場合
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障害年金(重い障害を持ったときにもらえる年金)の1級または2級を受けていた人が亡くなった場合
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すでに老齢年金をもらう資格を持っている人、または保険料を支払った期間(免除期間を含む)が合計25年以上ある人が亡くなった場合
★とても重要な「保険料をちゃんと払っていたか」のルール
上記のうち、特に多い「1」と「2」のケースでは、亡くなる前までに年金の保険料をしっかり払っていたかどうかが厳しくチェックされます。
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原則のルール: 亡くなった日の前日時点で、これまでに年金に加入すべきだった期間全体のうち、「3分の2以上の期間」で保険料を支払っている(または支払いを免除されている)必要があります。
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特例のルール: もし全体の3分の2に満たなくても、亡くなった日の属する月の前々月までの直近1年間に、保険料の「未納(滞納)」が1ヶ月もなければ大丈夫です。
日本の会社に勤めていて、給料から毎月自動的に天引きされている場合は基本的に問題ありませんが、会社を辞めて未加入の時期があったり、個人事業主などで国民年金の支払いを溜めていたりした場合は注意が必要です。
3. 年金を受け取ることができる「家族」の条件
次に、「誰が」お金を受け取れるかという条件です。誰でももらえるわけではなく、亡くなった人によって「生活を支えられていた(生計維持関係があった)」家族が対象になります。
対象となる家族の範囲と優先順位は以下の通りです。
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配偶者(妻または夫)と、子ども(一番優先されます)
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父母(両親)
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孫
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祖父母
★年齢の制限に注意してください
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子ども・孫の場合: 原則として「18歳になった年度の3月31日まで(高校を卒業するまで)」の未婚の子どもに限られます。もし障害を持っている場合は20歳未満まで対象になります。
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妻の場合: 年齢制限はありませんが、30歳未満で子どものいない妻の場合は、一生涯ではなく「5年間だけ」という期限付きの支給になります。
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夫・父母・祖父母の場合: 本人が亡くなった時点で「55歳以上」であること、かつ実際に支給が始まるのは「60歳から」となります。
4. 海外からの請求で「最大の壁」となる必要書類
海外に住んでいる家族が、日本の年金事務所にお金を請求する場合、ここが一番大変なステップになります。日本には「戸籍」という便利な制度がありますが、外国人の方には日本の戸籍がありません。そのため、自分たちが「本当の家族であること」や「亡くなった人と一緒に暮らしていた(仕送りをしてもらっていた)こと」を証明する書類をすべて母国で集める必要があります。
代表的な必要書類は以下の通りです。
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婚姻証明書(亡くなった人と夫婦であることを証明するもの)
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出生証明書(子どもがいる場合や、両親が請求する場合の関係証明)
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死亡診断書のコピー(亡くなった原因や日付を確認するもの)
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生計同一に関する申立書(海外にいても、定異的に仕送りを受けて生活が一緒だったことを証明する書類。第三者のサインなどが必要です)
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亡くなった前年の収入を証明する書類(妻などの所得が一定以下であることを証明します)
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亡くなった夫・妻の住民票の除票(日本での登録を抹消した証明)
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年金を受け取るための海外の銀行口座が分かる資料
ここに注意!翻訳と証明のルール
母国から取り寄せる書類は、当然その国の言葉で書かれています。日本の年金機構に提出する際は、「すべての書類に日本語の翻訳(訳文)」を付けなければなりません。 また、翻訳した人の名前や住所、作成した日付も記載する必要があります。さらに、その書類が本物であることを証明するために、現地の政府機関や日本大使館での認証を求められることも多く、これが外国人の方にとって非常に高いハードルとなっています。
5. 【公的機関のソース】さらに知っておくべき重要情報と肉付け
遺族年金の手続きを行うにあたり、政府や出入国在留管理庁、日本年金機構などの公的機関が発表している正確な関連情報を付け加えます。
① 脱退一時金との関係性(どちらか一方しか選べません)
日本を離れる外国人がよく利用する制度に「脱退一時金(だったいいちきん)」があります。これは、年金を一定期間払った外国人が帰国する際にお金が戻ってくる仕組みです。 しかし、万が一亡くなってしまった場合、家族が「遺族年金」を請求して受け取ると、その期間分の「脱退一時金」を後から請求することはできなくなります。逆に、先に脱退一時金を全額受け取ってしまうと、遺族年金をもらう権利は消滅します。どちらの手続きを進めるべきか、金額やその後の生活を考えて慎重に選ぶ必要があります。
② 年金通算協定(社会保障協定)の確認
日本は、いくつかの国(アメリカ、ドイツ、中国、フィリピンなど)との間で「社会保障協定」を結んでいます。これは、年金保険料の「二重払い」を防いだり、日本での加入期間と母国での加入期間を「足して計算(通算)」できたりする制度です。 例えば、日本での加入期間が短くて受給要件を満たせない場合でも、協定を結んでいる国(フィリピンや中国など)であれば、母国の年金期間を合算して要件をクリアできるケースがあります。ベトナムやネパール、ミャンマーなどは、現在協定の準備中であったり対象外であったりするため、国籍によって適用できるルールが異なる点に注意が必要です。
6. 外国人の遺族年金に関する「気になるQ&A」3選
Q1. 夫が日本で亡くなりましたが、私たちは籍を入れたばかりで、私はまだ母国にいます。仕送りの通帳記録などが少ないのですが、遺族年金はもらえますか?
A1. もらえる可能性は十分にあります。 婚姻届を出して正式な夫婦であれば、婚姻証明書によって家族関係は証明できます。「生活を共にしていた(生計維持)」の証明については、仕送りの銀行送金記録がベストですが、もし記録が少ない場合でも、過去の通話履歴やメッセージのやり取り、お互いの家族の状況などを詳細に記した「申立書」を丁寧に作成し、第三者の証明を添えることで、日本年金機構に認められるケースがあります。あきらめずに専門家に相談してください。
Q2. 遺族年金は、海外の銀行口座に直接振り込んでもらうことはできますか?その場合、現地の通貨になりますか?
A2. はい、海外の口座へ直接送金が可能です。 日本年金機構は、海外の銀行口座への振り込みに対応しています。ただし、どの銀行でも良いわけではなく、日本からの国際送金(SWIFTコードがある銀行など)を受け取れる口座である必要があります。また、お金は原則として米ドル(USD)や現地通貨に換算されて振り込まれます。手続きの際に「送金希望先金融機関の証明書」が必要になります。
Q3. 夫が亡くなって悲しみに暮れています。遺族年金の請求手続きは、いつまでにやらないといけませんか?期限はありますか?
A3. 遺族年金を請求する権利の期限(時効)は「5年」です。 亡くなった日の翌日から5年を過ぎると、時効によって年金を受け取る権利が消滅してしまいます。海外からの書類集めや日本語への翻訳には数ヶ月以上の長い時間がかかることが多いため、悲しみの中でも、できるだけ早く手続きの準備を開始することをおすすめします。
まとめ:難しい外国人の年金手続きは専門家に頼るのが安心です
日本で大切な家族を失った悲しみの中で、慣れない日本語の書類を作成したり、海外から複雑な証明書を集めたりするのは、残された家族にとって精神的にも肉体的にも非常に大きな負担です。
特に、出入国在留管理庁(入管)のルールや、日本年金機構の細かい審査基準を理解して、一発で不備のない書類を出すのは簡単なことではありません。書類に不備があると、海外との往復で何ヶ月も支給が遅れてしまう原因になります。
私たち「在留資格・VISA専門の行政書士」は、海外のご家族とのやり取り、必要書類の翻訳・チェックなども一括してサポートしております。