日本で生活を共にしていたものの、さまざまな事情ですれ違いが生じ、残念ながら離婚という選択に至るケースがあります。外国人同士のカップルや、日本人と外国人の夫婦において、妻が厚生年金の扶養に入っている(国民年金の第3号被保険者である)ケースは珍しくありません。
「私たちは外国人だけど、日本の年金制度の対象になるの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、国籍に関係なく、日本で厚生年金や国民年金に加入していた実績があれば、条件を満たすことで年金分割の請求を行うことができます。
年金分割には、夫婦の話し合いや合意が必要な「合意分割」のほかに、相手の同意がなくても手続きができる「3号分割(第3号被保険者期間に関する特例)」という制度が存在します。この3号分割を活用すれば、元パートナーが離婚に反対していたり、話し合いに応じない場合でも、単独で手続きを進めることが可能です。
3号分割の大きな特徴:元配偶者の「合意」は不要
通常の財産分与や多くの離婚条件では、お互いの話し合いと同意が不可欠です。しかし、厚生年金の「3号分割」に関しては、当事者間の分与割合に関する合意は一切不要とされています。
制度の仕組み上、婚姻期間中に会社員や公務員である夫(または妻)に扶養されていた期間(第3号被保険者であった期間)がある場合、その期間の厚生年金の記録(標準報酬)の2分の1(50%)を、自分の記録として分割してもらうことができます。相手のサインや同意書をもらう必要がないため、離婚後に連絡を取りたくない場合でも安心して進めることができる制度です。
3号分割を請求するための重要な2つの条件
誰でもいつでも請求できるわけではなく、3号分割を行うためには法律で定められた厳格な要件をクリアしていなければなりません。以下のポイントを必ず確認しておきましょう。
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対象となる期間の制限(特定期間) 分割の対象となるのは、外国人の被扶養配偶者が国民年金の「第3号被保険者」であった期間のうち、2008年(平成20年)4月1日以後の期間に限定されています。この日より前の期間については3号分割の対象外となるため注意が必要です。
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請求期限の厳守(5年以内) 最も見落としがちで重要なのがタイムリミットです。この制度は、「離婚をした日の翌日から起算して5年以内」に請求を行わなければならないという原則があります。この5年の期限を1日でも過ぎてしまうと、法律上いかなる理由であっても請求する権利が消滅してしまうため、離婚後は速やかに動き出す必要があります。(※2026年4月1日前に離婚等をした場合は離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)
3号分割の手続きに必要な書類一覧
実際に日本年金機構(年金事務所)へ標準報酬改定の請求を行うためには、いくつかの書類を準備する必要があります。スムーズに手続きを進めるために、あらかじめ以下のものを揃えておきましょう。
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標準報酬改定請求書(日本年金機構のホームページや窓口から入手可能)
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請求する外国人の年金番号もしくはマイナンバーが分かる資料
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婚姻期間を明らかにできる資料(戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、全部事項証明書または個人事項証明書など)
外国籍の方の場合、日本の戸籍に情報が十分に反映されていないケースや、母国での婚姻歴を証明する必要があるため、上記に加えて「自国発行の出生証明書、婚姻証明書、離婚証明書」などの公的書類の提出を求められることが多々あります。母国の証明書を取り寄せるには時間がかかることもあるため、期限内に間に合うよう余裕を持って準備することが大切です。
外国人の離婚と年金・ビザに関するよくあるQ&A(3選)
日本で暮らす外国人が直面しやすい、離婚にまつわる疑問や知りたいポイントをQ&A形式でまとめました。
Q1. 外国人ですが、日本で離婚したら年金分割でもらったお金は母国に帰国しても受け取れますか?
A. 一定の受給資格を満たしていれば、母国に帰国しても受給できる場合があります。 日本の公的年金制度には、受給資格期間(原則10年以上)を満たしている場合、国籍に関わらず海外へ出国したあとも年金を受け取ることができる仕組みがあります。また、日本と母国の間で「社会保障協定」が結ばれている国であれば、年金の加入期間を通算できるなどのメリットがあります。ただし、具体的な受給要件や手続きは個人の加入状況によって異なるため、お近くの年金事務所や専門家に確認することをおすすめします。
Q2. 夫に内緒で3号分割の手続きを進めることはできますか?相手に通知がいってトラブルになりませんか?
A. 3号分割は相手の合意が不要なため、手続きを進めること自体で相手の同意を求める連絡が行くことは原則ありません。 合意分割とは異なり、3号分割は法律上定められた割合(2分の1)で機械的に分割する制度です。そのため、年金事務所に対して単独で請求を行うことができます。ただし、日本年金機構からの通知物などが自宅に届く際などの状況によっては、同居家族や元配偶者に知られる可能性はゼロではないため、転居先や郵便物の受取方法には配慮しておくと安心です。
Q3. 配偶者ビザで日本に住んでいる外国人が離婚した場合、年金分割の手続きと合わせてビザはどうなりますか?
A. 離婚後、そのままでは在留資格(ビザ)が取り消されるリスクがあるため、14日以内の届出と6ヶ月以内の在留資格変更が必要です。 「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」といった身分系ビザを持つ外国人が離婚した場合、離婚成立の日から14日以内に入国管理局(出入国在留管理局)へ「配偶者に関する届出」を行うことが法律上の義務となっています。さらに、配偶者としての活動を行わないまま6ヶ月が経過すると、ビザが取り消される対象となります。日本に継続して住み続けたい場合は、定住者ビザへの変更や就労ビザへの切り替えなど、早急な対策が必要になりますので、入管専門の行政書士へ早めにご相談ください。