日本国内で外国人を雇う企業や、日本で働く外国人の方にとって、「保険」の手続きはとても複雑で分かりにくいものです。 「外国人だから日本の保険には入らなくていいの?」「アルバイトでも対象になるの?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、日本の在留資格VISA専門の行政書士が、外国人の「労働保険(雇用保険・労災保険)」の仕組みや加入ルールについて、法律用語をできるだけ使わず、初めての方にも分かりやすく解説します!
正しいルールを知らないと、思わぬ法律違反になったり、いざというときに国からのサポートが受けられなくなったりするリスクがあります。ぜひ最後まで読んで、正しい知識を身につけましょう。
1. そもそも「労働保険」ってなに?
日本の「労働保険」とは、大きく分けて次の2つの保険を合わせた呼び方です。
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雇用保険:仕事を辞めて次の仕事を探す期間(失業中)に、生活を支えるためのお金(基本手当など)がもらえる仕組みです。
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労災保険:仕事中や通勤中にケガをしたり、病気になったりしたときに、治療費や休業中の生活費を国がサポートしてくれる仕組みです。
日本では、働く人の国籍に関係なく、原則として日本人と同じようにこれらの保険が適用されます。しかし、外国人の「在留資格(ビザの種類)」や「働き方」によっては、特別なルールが定められています。
2. 外国人の「雇用保険」:入る人・入らない人の見分け方
雇用保険は、原則として「週に20時間以上働き、31日以上続けて雇われる見込みがある人」が全員入らなければならない保険です。 ただし、外国人の場合は「どのような資格(ビザ)で日本にいるか」によって、加入のルールが細かく分かれています。
① 【加入するケース】留学からそのまま日本の企業に就職した場合
留学生が日本の大学や専門学校を卒業し、在留資格を「技術・人文知識・国際業務」などの「就労ビザ」へ変更して日本の会社で本格的に働く場合は、確実に雇用保険の対象になります。日本人社員と全く同じ扱いです。
② 【加入しないケース】海外の親会社から日本の支社へ派遣(転勤)された場合
外国にある法人の社員が、日本の支社や関連会社に「企業内転勤」などの形で一時的に派遣(転勤)されてくるケースです。 この場合、その外国人は「派遣元の国(母国)」の雇用保険(失業補償制度)にそのまま加入していることが多いため、日本の雇用保険には加入しません(適用除外となります)。
③ 【加入しないケース】「留学」ビザでアルバイトをしている学生(昼間部)
「留学」の在留資格を持ち、週に28時間以内のアルバイト(資格外活動)をしている昼間部の学生は、雇用保険の対象にはなりません。 なぜなら、留学生の本分はあくまで「学業」であり、仕事を失ったからといって生活を維持するためのセーフティネット(雇用保険)を必要とする段階にはないと法律上みなされるためです。
④ 【加入しないケース】「特定活動(ワーキングホリデー)」で滞在している人
ワーキングホリデー(ワーホリ)で来日している外国人も、日本での滞在目的が「休暇・異文化交流」であり、就労はあくまで旅行資金を補うためのサブ的な活動とみなされます。そのため、雇用保険には加入しません。
3. 外国人の「労災保険」:アルバイトも全員カバー!
雇用保険には「週20時間以上」などの細かい条件がありましたが、「労災保険」のルールはとてもシンプルです。
① どんな働き方でも、全員が「労災保険」の対象です!
仕事中や通勤中のケガを補償する「労災保険」は、すべての外国人労働者に適用されます。
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海外からの一時的な派遣(企業内転勤)であっても対象になります。
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週に数時間だけ働く留学生や家族滞在の「アルバイト」であっても対象になります。
万が一、アルバイト中の外国人スタッフがケガをした場合、「アルバイトだから」「外国人だから」という理由で労災の申請を拒否することは違法です。事業主は必ず手続きを行う義務があります。
② 個人事業主として活動している場合は?
もし外国人が会社に「雇われている労働者」ではなく、完全に独立した「フリーランス」や「個人事業主」として活動している場合は、そもそも労働者ではないため、日本の労働保険(雇用保険・労災保険)の対象からは外れます。この点は日本人と同じルールです。
4. 外国人を雇う会社が絶対に行うべき「ハローワーク」への届出
外国人を1人でも雇い入れたり、または退職(離職)させたりした際、すべての会社には「外国人雇用状況の届出」が義務付けられています。これは法律(労働施策総合推進法)で決まっているルールです。
雇用保険の対象になる外国人の場合
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手続き:「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出します。
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届出のコツ:この届出用紙の備考欄に、外国人の「国籍・在留資格・在留期間・在留カードの番号」などを記入することで、「外国人雇用状況の届出」も同時に完了させることができます。
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期限:雇い入れた日の「翌月10日まで」にハローワークへ提出します。
雇用保険の対象にならない外国人の場合(例:留学生のアルバイトなど)
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手続き:雇用保険には入りませんが、「外国人雇用状況の届出(様式第3号)」を単独で提出する必要があります。
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期限:雇い入れた日の「翌月10日まで」にハローワークへ提出します(退職時も、辞めた日の翌日から数えて10日以内に届け出ます)。
もしこの届出を怠ったり、嘘の情報を届け出たりした場合、「30万円以下の罰金」という厳しいペナルティが会社に科される可能性があるため、十分な注意が必要です。
5. これが知りたかった!「労働保険」Q&A
Q1. 母国と日本の間で「社会保障協定」が結ばれている国の外国人です。日本の労働保険は免除されますか?
A1. いいえ、労働保険(雇用保険・労災保険)は免除されません。 日本はいくつかの国と「社会保障協定(二重加入を防ぐための条約)」を結んでいますが、この協定がカバーしているのは主に「年金」と「健康保険」です。 したがって、社会保障協定が結ばれている国から派遣された外国人であっても、日本の労働保険(雇用保険・労災保険)の加入ルールそのものが免除されることはありません。それぞれの加入要件(週の労働時間など)に沿って、正しく手続きを行う必要があります。
Q2. もし外国人を雇用保険に入れるのを忘れていたら、どうなりますか?
A2. 過去に遡って加入手続き(遡及適用)を行う必要があります。また、会社にペナルティが科される可能性もあります。 加入条件を満たしているにもかかわらず手続きを忘れていた場合、ハローワークで過去に遡って手続きを行うことになります(原則として、給料から雇用保険料が引かれていたことが証明できれば最大2年間遡ることができます)。 ただし、故意に加入させていなかったとみなされた場合は、ハローワークから指導を受けたり、雇用保険法違反として罰則を適用されたりするリスクがあります。気づいた時点で、速やかに専門家やハローワークに相談しましょう。
Q3. 「留学生が夏休み中で、週28時間を超えて働いている期間」は雇用保険に入れるべきですか?
A3. いいえ、雇用保険に加入させる必要はありません。 留学生は、学校の長期休業期間(夏休みや冬休みなど)に限り、法律上「週40時間まで」働くことが認められています。一時的に労働時間が週20時間を超えることになりますが、彼らの本分が「学生」であることに変わりはないため、この期間中であっても雇用保険の加入対象外のままとなります。 手続きの変更は不要ですので、そのままアルバイトとして雇用を継続して問題ありません。
まとめ:正しくルールを守ってスムーズな外国人雇用を!
外国人の労働保険は、「在留資格(ビザ)」と「働き方(労働時間)」によって適用ルールが細かく変化します。 特に会社側は、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」を正しく行うことが、コンプライアンス(法令遵守)の上で極めて重要です。これを怠ると、将来的に新しく外国人の就労ビザを申請・更新する際、出入国在留管理庁から「労働法を守っていない会社」と判断され、ビザが不許可になるリスクまで生じてしまいます。
「この外国人のケースは雇用保険に入るべき?」「手続きのやり方に不安がある…」という企業様や労働者の方は、ぜひ社労士や在留資格に関しては専門の当事務所までお気軽にご相談ください! 複雑な手続きをプロが優しくサポートいたします。