「日本で一緒に暮らしたい」——その願いを叶えるための在留資格が「家族滞在」ビザです。しかし、このビザは単に「家族だから」という理由だけで許可が出るわけではありません。
今回は初めての方でも分かりやすいように「家族滞在ビザ申請のポイント」と「審査のポイント」を優しく解説します。
1. 家族滞在ビザで呼べる「家族」の範囲とは?
まず最初に知っておくべきなのは、このビザで日本に呼べるのは「配偶者(夫や妻)」と「子」だけであるという点です。
-
配偶者(夫・妻): 法律上の婚姻関係が必要です。いわゆる「事実婚」や「内縁関係」では、残念ながら家族滞在ビザは認められません。また、既に離婚している場合や、死別している場合も対象外です。
-
子(こども): 実子(自分の子ども)はもちろん、養子も含まれます。さらに、かつては「未成年」であることが暗黙の了解でしたが、現在は成人していても、親の扶養を受けている(親の仕送りで生活している)実態があれば認められる可能性があります。
【重要】親や兄弟は呼べない? よく「自分の親や兄弟も呼びたい」というご相談をいただきますが、家族滞在ビザの対象には含まれません。親を呼ぶ場合は「特定活動(老親扶養)」など、非常にハードルの高い別の手続きが必要になります。
2. 呼び寄せる側の「扶養能力」が厳しくチェックされる
家族滞在ビザの本質は、「日本で働いている人が、家族を養う経済力を持っているか」にあります。入管法ではこれを「扶養能力」と呼びます。
チェックされる3つのポイント
-
十分な収入があるか: 呼び寄せる側の年収が低すぎると、「家族全員が日本で生活に困るのではないか(生活保護を受けるのではないか)」と疑われてしまいます。明確な基準額は公表されていませんが、一般的には世帯の人数に応じた安定的な収入(月収20万〜25万円以上が目安)が求められます。
-
納税義務を果たしているか: 住民税や所得税をしっかり払っているか、未納がないかも重要な判断材料です。
-
預貯金や資産: 給料だけでなく、銀行にいくら貯金があるかもサポート材料になります。
公的な根拠(ソース): 出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請(家族滞在)」の提出書類一覧において、「扶養者の支弁能力を証する資料」として住民税の課税・納税証明書の提出が義務付けられています。 出入国在留管理庁 公式HP:提出資料一覧
3. 「一緒に暮らすこと」が原則です
家族滞在ビザは、あくまで「家族が日本で共に過ごすこと」を目的としています。そのため、原則として同居が条件です。
「夫は東京、妻は大阪」のように別居している場合は、「なぜ別居が必要なのか」を合理的に説明できなければなりません(仕事の単身赴任など)。正当な理由なく別居していると、「ビザ目的の偽装結婚ではないか」と疑われるリスクがあります。
また、子どもについては、親がしっかりと「監護教育(親としての教育や世話)」を行っている実態が必要です。
4. 扶養者がビザを変えたら、家族はどうなる?
ここが意外と見落としがちなポイントです。 呼び寄せた側(扶養者)がビザを変更すると、家族のビザにも影響が出ます。
-
例:夫が「技術・人文知識・国際業務」から「永住者」に変更した場合 妻や子の「家族滞在」ビザは、そのままでは維持できません。「永住者の配偶者等」という別のビザに切り替える必要があります。
-
例:夫が帰国した場合 扶養者が日本からいなくなると、その扶養を受けている家族の「家族滞在」ビザの該当性は失われます。
5. アルバイト(資格外活動)の注意点
家族滞在ビザを持っている方は、そのままでは働くことができません。しかし、「資格外活動許可」を申請すれば、アルバイトが可能になります。
-
ルール: 週28時間以内
-
禁止事項: 風俗営業(パチンコ店、キャバクラ、麻雀店など)での仕事は厳禁です。
【注意!】稼ぎすぎはNGです 「扶養を受けている」ことが条件のビザですから、アルバイトで扶養者(夫や妻)よりも稼いでしまったり、一般的な生活費を優に超える収入を得たりすると、「もう扶養は必要ないですよね?」と判断され、次回の更新ができなくなる恐れがあります。
資格外活動の制限については、入管法第19条に基づきます。また、風俗営業での就労禁止は同法に明記されています。
6. 知っておきたいQ&A:これってどうなの?
Q1. 結婚式を挙げる前ですが、先に日本に呼び寄せることはできますか?
A1. 残念ながら、家族滞在ビザは「法律上の婚姻」が成立していることが大前提です。そのため、結婚式を挙げていなくても、本国(母国)の役所で結婚手続きが完了し、結婚証明書が発行されている状態でなければ申請できません。もし「日本で一緒に暮らしながら結婚の準備をしたい」という場合は、一度「短期滞在(観光)」ビザで入国し、日本で婚姻手続きを済ませてから在留資格の変更を検討する形になります。ただし、このルートは審査が厳しいため、事前に専門家へ確認することをお勧めします。
Q2. 赤ちゃんが日本で生まれたら、どうすればいいですか?
A2. 出生した日から30日以内に入管で在留資格の取得申請を行う必要があります。14日以内の役所への出生届とは別に手続きが必要ですので、忘れないように注意してください。
ソース: 入管法第22条の2(在留資格の取得)
Q3. 夫の収入が一時的に減ってしまいました。更新は難しいでしょうか?
A3. 確かに不利な条件ではありますが、一時的な理由(会社の業績悪化や病気など)であり、今後の回復見込みが証明できれば許可される可能性があります。預貯金の証明や、親族からの支援などを丁寧に説明する「理由書」の作成が鍵となります。
まとめ:大切な家族との時間を守るために
家族滞在ビザの申請は、一見シンプルに見えて、実は「継続的な扶養実態」という目に見えにくい部分を書類で証明しなければならない難しい手続きです。
-
書類の不備
-
収入と世帯人数のバランス
-
過去のオーバーワーク(週28時間超過)
これらが原因で不許可になるケースが増えています。もし、少しでも不安がある場合は、ぜひ「在留資格専門の行政書士」に相談しましょう。