日本で働いている外国人の方であれば、在留カードと一緒に「指定書」という紙がホッチキスで止められているのを見たことがあるかもしれません。
「これって何のためにあるの?」「ただの補足書類だからあまり気にしなくてもいいのでは?」と思っている方も多いのではないでしょうか。実は、この指定書は、あなたの在留資格(ビザ)の効力を支える非常に重要な書類です。
今回は、意外と知られていない「指定書」の役割と、転職や業務内容の変更時に必ず押さえておきたい注意点をわかりやすく解説します。
「指定書」とは何か?
まず、指定書とは一体どのようなものか、法律的な難しい言葉を抜きにして説明します。
多くの在留資格は、基本的に「どんな仕事をするか」「どこで働くか」がある程度自由に決められています。しかし、特定の在留資格に関しては、法務大臣が「あなたはこの会社で、この仕事をする場合に限り、日本にいることを許可します」と個別に指定する必要があります。
この「許可された条件」が書かれた紙が「指定書」です。
つまり、指定書は単なる補足書類ではなく、「あなたの在留許可の条件がここに書かれていますよ」という、在留カードと一体となって効力を発揮する重要な証明書なのです。
指定書が必要な在留資格とは?
すべての外国人に指定書が交付されるわけではありません。指定書が必要なのは、以下のようなケースです。
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高度専門職(1号イ・ロ・ハ) 高度なスキルを持つ人材として認められた方です。契約先の企業や活動内容が詳細に指定されています。
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特定技能(1号・2号) 特定の産業分野で働くために必要な資格です。「どの分野で」「どの企業と契約して働くか」が厳密に指定されます。
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特定活動 インターンシップやワーキングホリデー、外交官の家事使用人など、法務大臣が個別に活動を指定するタイプです。
これらの在留資格は、活動場所や仕事内容が「日本での滞在を許可した特定の条件」であるため、指定書によって活動範囲が明確に制限されているのです。
「指定書の内容」と「実際の仕事」が違ったら?
ここからが最も重要なポイントです。
指定書に記載されている内容と、あなたの実際の仕事内容や勤務先が少しでも違ってしまうと、不法就労になってしまうリスクがあります。
例えば、「A社でエンジニアとして働く」という指定書を持っている人が、勝手に「B社」で働いたり、エンジニアとは全く関係のない「飲食店のホールスタッフ」として働いたりしてはいけません。
特に注意してほしいのが、「同じ会社内での部署異動」です。
会社自体は同じであっても、指定書に記載された活動内容と実態が異なれば、それは在留資格のルール違反となる可能性があります。指定書に書かれた活動は、あくまで「その内容に限定して許可されている」というルールだからです。
もし業務内容や勤務先に変更がある場合は、必ず「在留資格の変更許可申請」が必要です。面倒だからと放置しておくと、次回の在留期間更新の際に不許可になったり、最悪の場合は退去強制の対象になったりすることもあるため、甘く見てはいけません。
転職やキャリアアップを考える方へ
「もっと良い条件の会社に転職したい」「やりたい仕事が変わった」という場合も、指定書の扱いに注意が必要です。
ただし、例外もあります。 例えば、特定技能の外国人が、同じ「特定産業分野」の中で転職する場合などは、必ずしも最初から在留資格をゼロから取り直す必要がないケース(届出のみで良い場合)もあります。しかし、分野が完全に変わる場合や、活動内容が大きく異なる場合は、事前の確認が不可欠です。
出入国在留管理庁が公開している情報によると、在留資格に関する諸手続は、自分の状況がどの区分に当てはまるのかを正確に把握することが、スムーズな申請の鍵となります(出典:出入国在留管理庁『在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン』)。
「自分は届出だけでいいのか、それとも新しい許可が必要なのか?」と迷ったときは、独断で判断せず、入管法に詳しい専門家である行政書士に相談することをお勧めします。
よくある質問 Q&A
Q1. 指定書を失くしてしまいました。どうすればいいですか?
A. 指定書は在留カードと一体となって効力を発揮するものです。紛失した場合は、再交付の手続きが必要です。速やかに居住地を管轄する出入国在留管理局へ相談しましょう。放置しておくと、職務質問などで不利益を被る可能性があります。
Q2. 「特定技能」ですが、同じ会社内で別の部署に異動になりました。これでも変更申請が必要ですか?
A. 部署の異動によって、指定書に記載された「特定産業分野」や「契約機関」の実態が変わる場合は注意が必要です。たとえ会社が同じでも、仕事の内容が大きく変わるなら、在留資格の変更申請や、入管への届出が必要になるケースがほとんどです。自己判断せず、まずは会社の人事担当者や専門家に確認してください。
Q3. 指定書に記載されている仕事以外に、副業でアルバイトをしてもいいですか?
A. 原則としてできません。指定書には、許可された活動内容が細かく記載されています。その範囲外の活動(アルバイトなど)をする場合は、「資格外活動許可」が必要です。許可を得ずに副業を行うと、在留資格の取り消し対象になる可能性があるため絶対にやめましょう。
最後に
指定書は、あなたの日本でのキャリアを守るための「許可証」です。もし転職やキャリアアップを検討されているなら、まず手元の指定書を読み返してみてください。そこに書かれていることが、あなたの日本での活動の「ルール」です。
手続きに不安がある、あるいは自分のケースが変更申請が必要なのか判断がつかないという方は、ぜひお近くの入管専門の行政書士にご相談ください。