日本で仕事をする中で、多くの方が気になるテーマの一つが「有給休暇(ゆうきゅうきゅうか)」の仕組みです。 「外国人でも日本人と同じように有給休暇は取れるの?」 「会社から休む日を指定されたけれど、これは普通のこと?」 「母国に一時帰国したいけれど、長期で休みを取ってもいいの?」
このような疑問や不安を感じたことがある方は少なくありません。実は、日本の労働法では国籍に関係なく、すべての働く人に有給休暇の権利が認められています。しかし、文化や習慣の違いから、休みに関する考え方でトラブルになってしまうケースも多く見られます。
この記事では、在留資格や労務管理に詳しい専門行政書士の視点から、外国人労働者の有給休暇に関するルールや注意点、よくある疑問について分かりやすく解説します。
1. 外国人でも有給休暇はもらえる?基本ルールを解説
まず結論からお伝えすると、国籍や在留資格の種類にかかわらず、一定の条件を満たしていれば誰でも有給休暇を取得できます。
正社員だけでなく、契約社員、パートタイム、アルバイト、技能実習生、特定技能など、どのような雇用形態であっても差はありません。日本の法律(労働基準法)では、国籍によって労働条件で差をつけることを禁じているためです。
有給休暇がもらえる2つの条件
有給休暇が発生するためには、原則として次の2つの条件をクリアする必要があります。
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会社に入社してから6か月以上続けて働いていること
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決められた労働日の8割以上、出勤していること
この2つを満たすと、最初に10日間の有給休暇が与えられます。その後も長く働き続けることで、1年ごとに付与される日数が少しずつ増えていきます。
※例えば、アルバイトのように週の勤務日数が少ない場合でも、働いた日数や週の労働時間に応じた日数の有給休暇がしっかり付与されます。
2. 有給休暇は基本的に「自分の好きな時」に取れる
有給休暇の大きな特徴は、働く人が「この日に休みたいです」と希望した日に取ることができるという点です。これを法律用語で時季指定権(じきしていけん)と呼びますが、簡単に言えば「使い道も時期も、働く人が自由に使って良い休み」ということです。
休む理由について、会社に詳しく説明する義務はありません。 「家族と過ごしたい」「旅行に行きたい」という理由は勿論のこと、例えば「混雑した電車での移動を避けたい」「感染症予防のために家で過ごしたい」といった理由であっても、有給休暇を使うことが可能です。会社は「そんな理由では休ませない」と拒否することはできません。
会社が休む日を変更できる場合もある?
原則は自由ですが、例外もあります。例えば、その人が休むことで会社の事業運営が立ち行かなくなるような特別なケースでは、会社側から「別の日に変更してもらえませんか?」と相談されることがあります。ただし、これはあくまで「時期をずらす」ための対応であり、有給休暇そのものを奪うことはできません。
3. 会社が休みを指定する「計画年休」と年5日の取得義務
「自分から申請していないのに、会社から休みの日を指定された」という話を聞いたことがあるかもしれません。これには日本の法律に基づく2つのルールが関係しています。
① 年5日の有給休暇取得義務(働き方改革)
日本では法律の改正により、「年間に10日以上の有給休暇が与えられた人には、会社は必ず1年間で5日以上の有休を取らせなければならない」という義務が企業に課されています。
もし働く人が自分から一度も有給休暇の申請を出さない場合、放置しておくと会社が法律違反になってしまうため、会社側から「この日に休んでください」と日付を指定して休ませることがあります。
② 計画年休(けいかくねんきゅう)という仕組み
会社と労働者の代表が特別な取り決め(労使協定)を結ぶことで、有給休暇のうち5日を超える分について、あらかじめ会社全体の休みとして日程を決めておく仕組みがあります。これを「計画年休」といいます。
例えば、「年末年始の前後」や「夏の大型連休」などに合わせて会社全体で有休を一斉に消化させることで、休みを取りやすくする目的などで使われます。
4. 外国人と日本企業の「休みの感覚」の違いとトラブル防止策
有給休暇の運用では、日本人と外国人の間で「価値観のギャップ」が生じやすく、これが職場でのトラブルにつながるケースがよくあります。
価値観や文化の違いによるギャップ
日本の職場文化では、周囲の同僚に遠慮して数日ずつの短い休みをこまめに取る人が多い傾向にあります。一方で、海外ではクリスマスやテト(旧正月)、宗教上の祝祭日、あるいは母国への一時帰国に合わせて、2〜3週間のまとまった長期休暇を取得するのが一般的という国も多くあります。
会社側が「全員この期間に集中して休みを取ってほしい」と考えて計画年休を設定しようとしても、外国人社員側は「母国のイベントや一時帰国のタイミングでまとめて休みを使いたい」と希望することがあり、意識のズレが生じます。
トラブルを防ぐためのポイント
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労働者側のポイント: 一時帰国などで長期間の休みを取りたい場合は、直前になって伝えるのではなく、数か月前から会社や上司に相談し、スケジュールを共有しておくことが大切です。
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会社(雇用主)側のポイント: 一方的に休日の日程を押し付けるのではなく、外国人スタッフの宗教的背景や母国の文化、一時帰国の希望などを事前にヒアリングし、双方で話し合いながら休暇スケジュールを調整することが求められます。
5. 【公的機関の情報】公的な基準とルール違反の罰則について
ここで、厚生労働省や出入国在留管理庁(入管)などの公的機関が公表している正確な情報をもとに、法的根拠やルールについて詳しく知っておきましょう。
① 労働基準法第3条(均等待遇の原則)
労働基準法第3条では、「労働者の国籍、信条、社会的身分を理由として、賃金や労働時間その他の労働条件において差別的取扱いをしてはならない」と定められています。外国人であることを理由に有給休暇を与えない、あるいは付与日数を減らす行為は明確な法律違反です。 (参照元:厚生労働省「日本で働く外国人の方のための労働基準法等のポイント」)
② ルール違反に対する罰則
企業が労働者に規定の有給休暇を与えなかった場合や、年5日の取得義務を果たさなかった場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金などの罰則が科される可能性があります。 (参照元:厚生労働省 滋賀労働局「外国人を雇用する事業主の皆様へ」)
③ 一時帰国に対する配慮の指針
厚生労働省が定める「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」では、外国人労働者が一時帰国を希望する場合には、有給休暇をまとめて取得できるようにするなど、必要な配慮や人員調整に努めることが事業主に求められています。 (参照元:厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」)
④ 在留資格(ビザ)の更新への影響
企業が労働関係法令を遵守していない場合、雇用されている外国人自身のビザ更新や、企業の受入れ態勢評価に悪影響を及ぼすリスクがあります。特にお互いがルールを守って適正な労働環境を維持することが、日本で長く安心して過ごすための基本となります。 (参照元:出入国在留管理庁「外国人材の受入れ・共生に関する基本方針」)
6. 気になる疑問を解決!知っておきたいQ&A 3選
外国人労働者の方や人事担当者からよく寄せられる「これを知りたかった!」という疑問を3つ厳選して解説します。
Q1. 有給休暇が残ったまま退職する場合、会社にお金で買い取ってもらうことはできますか?
A. 原則として、会社に有給休暇の買い取りを強制することはできません。 日本の法律では、有給休暇はお金に換えるのではなく「休んでもらうこと」を目的としているため、在職中に買い取ることは禁止されています。 ただし例外として、退職時に使い切れず残ってしまう有給休暇や、法律上の有効期限(2年間)を過ぎて時効消滅してしまう分について、会社が好意で買い取ることは法律上禁止されていません。退職する際は、退職日までに残りの有休を使い切るスケジュールを会社と話し合って決めるのが一般的です。
Q2. 一時帰国のために、まだ発生していない未来の有給休暇を「前払い(前借り)」で使わせてもらうことはできますか?
A. 法律上の義務はありませんが、会社が認めれば前払い(前倒し付与)することは可能です。 例えば入社して3か月目など、まだ法定の有給休暇が発生していないタイミングで母国に帰国しなければならなくなった場合、会社に法律上の有休を与える義務はありません。 しかし、会社が福利厚生や配慮の一環として、本来6か月目に付与される予定の有休を繰り上げて事前に付与することを社内ルールで認めている場合もあります。まずは会社の就業規則を確認するか、人事担当者に相談してみましょう。
Q3. 有給休暇を取ったことを理由に、給料を減らされたり、評価を下げられたりすることはありますか?
A. いいえ、有給休暇を取得したことを理由に不利益な扱いをすることは法律で固く禁止されています。 労働基準法第136条により、有給休暇をとった日を「欠勤」として扱って給料を引いたり、賞与(ボーナス)の査定で評価を下げたり、皆勤手当をカットしたりすることは違法とされています。有給休暇を使った日は、通常通り働いたものとして給与が支払われます。
7. まとめ:ルールを正しく理解して心地よい職場環境を作ろう
外国人労働者の有給休暇についてポイントをまとめます。
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外国人であっても、条件を満たせば日本人と全く同じ条件で有給休暇がもらえる。
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有給休暇は原則として、本人が希望する時期に自由に取ることができる。
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年間10日以上の有給休暇がある場合、会社は年5日以上を取得させる義務がある。
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長期休暇や一時帰国を希望する場合は、早めに会社とコミュニケーションを取ることが大切。
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法律や公的指針に基づき、互いの文化や立場を尊重し合うことがトラブル防止のカギ。
休みに関するルールを正しく理解し、会社と働く方の双方が心地よく信頼関係を築いていける労働環境を目指しましょう。
ビザ(在留資格)の申請手続きや、外国人雇用の労務管理・契約内容についてお悩みや不明な点がありましたら、在留資格専門の行政書士、労働環境や法律については社労士にご相談ください。