日本で就労ビザを取得して働く際、法律で厳しく決められているルールの一つに「日本人と同等額以上の報酬を受けること」というものがあります。しかし、この「同等額以上」という言葉、具体的にどうやって判断されるのか疑問に思ったことはありませんか?
「最低賃金さえ超えていればいいのでは?」と思われがちですが、実はもっと深いルールがあるのです。今回は皆さんが知っておくべき「給料の決まり方」について、分かりやすく噛み砕いて解説します。
1. なぜ「日本人と同じ」である必要があるのか?
日本の入管法(出入国管理及び難民認定法)では、多くの就労ビザ(技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能など)において、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが、上陸許可の基準(ルール)として定められています。
これには大きな理由が2つあります。
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外国人の権利を守るため: 「外国人だから」という理由だけで、不当に安い賃金で働かされることを防ぐためです。
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日本の労働市場を守るため: 安価な労働力が流入することで、日本人の雇用機会が奪われたり、全体の賃金水準が下がったりするのを防ぐためです。
つまり、このルールは働く外国人にとっても、受け入れる日本社会にとっても非常に大切な「安心のライン」なのです。
2. 「報酬」に含まれるもの・含まれないもの
ここで言う「報酬」とは、仕事をしたことに対して支払われる対価のことです。
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含まれるもの: 基本給、ボーナス(賞与)、役職手当、調整手当など
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含まれないもの: 通勤手当(交通費)、扶養手当、住宅手当など(実費弁償としての性格が強いもの)
月額の報酬を計算する際は、ボーナスなどを含めた「1年間の総額」を12で割って算出するのが一般的です。
3. 「日本人と同等」かどうか、どうやって決まる?
審査では、単に「月給20万円以上」といった絶対的な金額で見るのではなく、その会社にいる「日本人社員」と比較して判断されます。具体的には以下の4つのステップでチェックされます。
① 会社の賃金規定がある場合
まず、その会社に「給与規定(給料のルールブック)」があるかを確認します。規定がある場合は、その内容に従って「学歴」「職歴」「年齢」などが同じ日本人と同じランクの給料が支払われているかが判断基準になります。
② 同じ仕事をしている日本人がいる場合
規定がはっきりしない場合でも、同じ会社に似たような仕事をしている日本人(例えば大卒・経験3年など)がいれば、その人と比較します。 例えば、元・技能実習生が「特定技能」に移行する場合、すでに3年程度の経験がある「技能者」とみなされます。そのため、新卒の日本人ではなく、3年程度の経験を持つ日本人技能者と比較して同等以上の給料である必要があります。
③ 比較できる日本人が社内にいない場合
もし、社内に比較できる日本人が一人もいない場合はどうするのでしょうか? その場合は、その人の「責任の重さ」「年齢」「これまでの経験年数」などを考慮して、もしその会社に同じ条件の日本人が入社したとしたら、いくら支払うか?という観点で判断されます。
④ 近隣の同業他社と比較する場合
社内での比較が難しい特殊なケースでは、同じ地域のライバル企業で働く「同じようなレベルの外国人」や「日本人」の給料水準を参考にすることもあります。
4. 知っておきたい「最新の審査ポイント」
公的なガイドライン(出入国在留管理庁)によると、現在は単に「日本人と同じ金額」であることだけでなく、その根拠となる資料の提出が厳格に求められています。
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賃金台帳の提出: 実際に働いている日本人社員の給与実績を証明する書類が求められることがあります。
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説明書の作成: なぜその金額になったのか、学歴や職歴をどう評価したのかを行政書士などが説明書にまとめることが、スムーズなビザ取得の鍵となります。
(参照元:出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領」および「技術・人文知識・国際業務の審査要領」)
5. 「これ知りたかった!」Q&Aコーナー
Q1. 試用期間中は日本人より安くても大丈夫ですか?
A1. いいえ、原則として認められません。 試用期間であっても、日本人社員に適用される試用期間の条件と同じである必要があります。「外国人だから試用期間は安く設定する」というのは、同等額以上のルールに抵触し、ビザが不許可になる原因となります。
Q2. 残業代を含めて「日本人と同等」と言えますか?
A2. 言えません。 「同等額以上」の比較は、あくまで「基本給+諸手当(残業代を除く)」で行います。残業をたくさんさせるから基本給は低くていい、という理屈は通りません。毎月決まって支払われる安定した報酬で比較されます。
Q3. 転職したときに給料が下がると、ビザ更新に影響しますか?
A3. はい、影響する可能性が高いです。 前の会社より給料が下がる場合、入管から「なぜ下がったのか」「その金額で日本人と同等と言えるのか」を厳しくチェックされます。職務内容が変わらないのに給料だけが下がる場合は、合理的な理由(時短勤務への変更など)がない限り、更新が難しくなることがあります。
最後に
「日本人と同等額以上の報酬」というルールは、一見すると会社にとって厳しいハードルのように見えますが、優秀な外国人材に長く日本で活躍してもらうための「信頼の証」でもあります。
給与設定やビザの申請で少しでも不安がある場合は専門家に相談しましょう。