日本で働く外国人の皆さん、転職が決まった時や今の会社を辞めた時、お祝いや送別会で忙しくなっていませんか?実は、そのタイミングで最も忘れてはいけないのが「入管への報告(届出)」です。
「新しい会社に入れば、入管には勝手に伝わるだろう」と思い込んでいる方が非常に多いのですが、それは大きな間違いです。この届出を忘れると、次回のビザ更新で期間が短縮されたり、最悪の場合は不許可になったりするリスクがあります。
今回は所属機関に関する届出の重要性と、万が一忘れてしまった時のリカバリー方法を徹底解説します。
1. 「所属機関の届出」は日本で生きるための義務
日本に中長期滞在する外国人(中長期在留者)には、生活の基盤となる組織(所属機関)に変更があった場合、14日以内に出入国在留管理局(入管)へ報告する法的義務があります。
対象となる主なケース
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就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)の人: 転職した、退職した、派遣先が変わった、会社名が変わった。
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留学生: 卒業した、退学した、転校した。
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身分系ビザ(日本人の配偶者等など): 離婚した、死別した。
入管法第19条の15に基づき、この報告は「任意」ではなく「義務」です。入管は、皆さんが許可された活動を継続しているかをこの届出によって確認しています。
2. 【ケーススタディ】転職したのに「退職の届出」を忘れていたAさんの悲劇
ここで、あるトラブル事例を紹介します。
【相談内容】 ITエンジニアのAさんは、3年間の「技術・人文知識・国際業務」ビザを持っていました。1年前に前の会社(X社)を円満退社し、すぐに今の会社(Y社)に転職しました。 Y社でも同じエンジニア職なので問題ないと思い、入管には何も連絡せずに1年が経過。今回、ビザの更新時期が来たので申請したところ、入管から「なぜ1年前に退職したことを報告しなかったのか?」と厳しく追及されてしまいました。
【解説と結果】 Aさんは「新しい会社で社会保険にも入っているし、税金も払っているから入管も知っているはず」と思っていました。しかし、入管のシステムと社会保険・税金のシステムは別物です。 結果として、Aさんのビザは更新されましたが、それまで「3年」だった期間が「1年」に短縮されてしまいました。さらに、次回の「永住申請」の際にも、この届出義務違反が「素行が善良でない」と判断される火種を残すことになってしまったのです。
3. 届出を放置することによる3つの大きなデメリット
資料にも記載されている通り、届出を行わないことによる不利益は想像以上に重いです。
① 20万円以下の罰金(刑事罰)
入管法第71条の5に基づき、正当な理由なく届出を怠った場合は罰金刑に処せられる可能性があります。また、嘘の報告をした場合は「1年以下の懲役または20万円以下の罰金」と、さらに罪が重くなります。
② 在留期間(ビザの長さ)が短くなる
これが最も実務的なペナルティです。入管のガイドラインでは、届出義務を履行しているかどうかが、在留期間(1年、3年、5年など)を決定する際の重要な判断材料とされています。 義務を果たしていない人は「在留状況を常に把握する必要がある」とみなされ、最短の「1年」ビザしか付与されないケースが多発しています。
③ 永住・帰化のハードルが上がる
永住権の申請では、直近5年〜10年の素行が審査されます。ここで「法律を守っていない時期があった」と記録に残ると、どれだけ年収が高くても不許可になる原因となります。
4.Q&A
Q1. 転職先が決まらないまま退職しました。どう届出すればいい?
A. まずは「離脱(退職)の届出」だけをすぐに出してください。 「次の仕事が決まってから、まとめて報告すればいいや」という考えが一番危険です。退職した日から14日以内に、まずは「今の会社を辞めました」という報告だけを完了させましょう。その後、新しい会社が決まったら、改めて14日以内に「移籍(採用)の届出」を行えば完璧です。
Q2. 14日の期限を大幅に過ぎてしまいました。今さら出すと怒られる?
A. 怒られることを恐れて隠し続けるのが最悪の選択です。今すぐ出しましょう。 入管の窓口やオンラインで遅れて提出しても、その場で逮捕されるようなことはありません。むしろ、更新申請の時に「実は1年前の届出をしていませんでした」と発覚する方が、印象は遥かに悪くなります。自発的に遅れて出した事実は、「ミスをしたけれど誠実に対応した」というプラスの評価に繋がります。
Q3. 会社が「こちらで手続きしておくから大丈夫」と言っています。信じていい?
A. 会社側の届出と、あなた自身の届出は「別物」です。必ず自分で行ってください。 実は、会社側にも「外国人を雇用・離職させた場合の届出(ハローワーク経由など)」の義務があります。しかし、それとは別にあなた個人にも届出義務があるのです。会社が手続きをしたからといって、あなたの義務が免除されるわけではありません。必ず自分自身で完了させ、控えを保管しておきましょう。
5. 届出はたった5分!スマホやPCで今すぐできる
現在はわざわざ入管の窓口に行く必要はありません。
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出入国在留管理庁電子届出システム: 利用者登録をすれば、24時間いつでもネットから報告可能です。
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郵送: インターネットが苦手な方は、届出書を印刷して、在留カードのコピーと一緒に東京入管へ郵送しましょう。
郵送先(全国一括受付): 〒160-0004 東京都新宿区四谷1-6-1 四谷タワー14階 東京出入国在留管理局 在留調査部門 届出受付担当 ※封筒に赤字で「届出書在中」と記入してください。
まとめ
日本でのキャリアアップを目指して転職するのは素晴らしいことです。しかし、その一歩目で「届出」という小さなハードルを躓いてしまうのは非常にもったいないことです。 「14日以内の報告」を習慣づけ、クリーンな在留状況を維持しましょう。